Voice of god

狙ったのは水曜の午後の上げ込みだった

本来は朝の引きを狙っていたが凱を保育園に送り届け係がある

8時に送りさらに仕事を済ますと11時を回り

ともすれば狙いは潮の上げでうねりが更に強まる午後の波だった

七里クローズ寸前との情報に慌ててFlat4に火を入れる

朝比奈の峠をアクセルべた踏みで横転のリスクを冒してまで向かう価値が

其処にはある....

梅雨前線と干渉し迷走の一途を辿った台風3号

皆　波が上がるタイミングを計り予定を開けるのに苦心した事だろう

山の神に波の祈りを捧げると雨は止んで藍色の言葉が聞こえた

その言葉の真意を確かめる為に　潮の引き切った鋸岩から沖へと漕ぎ出る

赤い褌が似合う此処も最大干潮を迎え岩肌を露出させた

Rivieraが覚醒する迄には至らなかった　

だが久しぶりに入ったうねりに此処の波を待ちわびるフリーク達のラインが

山の上からも確認出来た

これを見ても焦って出る必要はない　この午後に照準を絞って何日も前から空けたんだ

いつも思う　社会の為　Surferの仕事は極力フレックスに　

上がっているであろう波を気にして一日に何十回も波情報を見る人間と　

3時間与えられて好きなスポットで極上の波に乗ってスッキリした人間

どちらが良い働きをするかは考えるまでもない

納期が迫る誇りある仕事が控えていた　前日の睡眠は3時間

だからこそ必要だったこの時間　樟んだ魂に光が当り岬の山の上からの神の濡れた声が

俺の脳内を満たしていった.....

沖からは恐ろしいほど規則的な炸裂音が　頭の裏側に響いて止まなかった　

カビが生えてなかったBIRDWELLにビーバーテールのジャケット着て飛び込んだよ

peace